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堂島先物取引所は、米の質に関する正確な定義、売り渡し日、場所、米の質を評価する専門家、そして先物契約の清算取引所等を持っていた。
このように実際に取引所が存在し、また日々の清算も行なわれていたらしい。
日本では、この米の先物市場以前に、かなり洗練された金融上の契約が存在していた。
おそらく、オランダの影響が強かったのだろう。
米や銀を担保とする証券が存在し、先渡し契約(フォワード・コントラクト)も存在していたらしい。いずれにせよ、大阪先物市場は、流動性を供給し、米に関する価格発見(プライス・デイスカバリー)機能を提供していた。
米価が政府によって規制されている現在の米市場とは比較にならないほどの、自由な米市場が形成されていたのである。
当然、大阪商人たちは、米先物取引によって、米のヘッジ取引を行なうことが可能であった。
この米問屋の事業それ自体は、かなり安定しており、ほとんどリスクが存在しなかった。
米の値段に関しては、かなり大きなリスクが存在した。
したがって、米問屋は、米の先渡し契約を売り、米価を固定する必要性が生まれていた。
先渡し契約は流動性が乏しく、困難'性を極めた。
先渡し契約とは、将来の特定日(満期日)に、特定の価格で売り渡す契約のことである。
たとえば、米を生産する農家は、米問屋に米を売る。
米問屋は、逆に、農家から米を買い取る。
この先渡し契約では、買い手と売り手の両当事者が先渡し契約に拘束される。
したがって、流動性が乏しい。
たとえば、農家がこの先渡し契約を解除しようとすれば、米問屋はどう思うだろうか。
結局、農家と米問屋は、お互いの信用度をチェックしあわなければならない。
つまり、このような先渡し契約は、生来、すぐれて信用を取引する手段なのである。
結局、よい信用を持つ人だけが、先渡し契約を利用することができるにすぎない。
先物契約は先渡し契約とは異なる。
先物契約者はお互い同士では取引せずに、むしろ先物取引所と取引する。
したがって、信用度を互いに確かめ合う必要はなくなる。
先物契約は、契約者独自のニーズに沿ったものではなく、標準化された商品である。
加えて、先物契約は、債務履行を担保するために、証拠金の値洗い(マーク・ツー・マーケット:時価評価)と追証(マージン・コール)に依拠している。
先物契約を買った場合、取引所と毎営業日に値洗いを実施することを約定することになる。
現物を買うことと、同じわけではない。
先物取引をする場合には、当初証拠金が必要となる。
そして、通常、投資家は、先物で買った商品を受け取ることを望んでいるわけではない。
たとえば、読者が原油の先物を買った場合、満期にご自分の庭先に原油を届けられたとしたら、大変なことになってしまうだろう。
環境汚染で罰せられることにもなりかねない!?先物契約を売った場合でも、同様である。
投資家は、現物の商品を期日に届けるつもりはさらさらないだろう。
たとえば、金の先物を売った場合に、満期日にこれを届けるとなると、重さで文字通り大変な重労働となるだろう。
それに、強盗から身を守る必要もあろう。
映画の007さながらの、アクション・プレイが要求されるかもしれない。
冗談はさておき、先物の売りでも、買いでも、証拠金取引を前提としており、ほとんどの取引は、日経225先物やminiを含めて、現物の受け渡しよりも差金決済という形をとる。
毎日、取引所(日経225先物の場合には大証)は、清算価格と呼ばれる価格を決定する。
これは、通常、その日の終値である。
終値が確定できない場合、気配値が参照される。
そして、満期まで(あるいは反対売買で清算されるまで)、先物の買い手の証拠金勘定(マージン・アカウント)は、この清算値と契約金額の積の変化分だけ、加減される。
仮に、先物契約が満期まで反対売買によって清算されない場合には、先物の買い手の証拠金勘定に、現物価格と最終清算価格との差を契約金額に乗じた金額が、加減される。
そして、仮に、先物契約が物理的商品の引き渡しであれば、例外的ではあるが、満期日に買い手は商品を受け取ることになる。
日経225では、差金決済のみ。
なぜ、このようなことを、取引所は毎日繰り返しているのだろうか?それは、先物の買い手や売り手に債務不履行が発生することを防ぐためだ。
仮に、保証金50万円を証券会社経由大証に支払って、日経225先物を16,000円で1枚買い建てたとしよう。
あるいは、miniを5万円の証拠金を積んで、日経225先物の取引金額は1,600万円である。
ここで、相場が500円急落したとしよう。
下落率にして、「わずか」3.1%にすぎない。
500円幅で日経平均株価が急落すれば、miniであれ、通常の先物の買いであれ、証拠金はすべて吹っ飛んでしまう。
つまり、500円の下げは、からだ。
では、1,000円急落したとしたら、どうだろう。
マイナス6.2%とはかなりの急落だが、絶対ないとは決して言い切れない。
これも、単純なminiの買いのケースでは、1,000円の100倍に相当する10万円の損失になる。
通常日経225先物であれば、1,000倍の100万円の損失にあたる。
あなたは、この債務超過を支払う能力があるだろうか。
これが、証券会社と取引所の問題なのである。
毎日、値洗いを義務づけ、必要なれば追証を要求することで、取引所は債務不履行に伴う損失を限定して、先物取引全体の流動性を維持していることになる。
なお、先物の売りのケースでは、株価下落によって影響される売り手と買い手の立場は、ちょうど先物の買いのケースの反対になる。
読者自らこの場合に、売り手の損益がどのようになるか考えてみてほしい。
さて、先に見た我々の祖先である江戸時代の農民の名前を、仮に「耕作さん」としよう。
この「耕作さん」が、秋の米の収穫期に米価が下落するのではと恐れ、大阪堂島米先物取引所で、夏の6月に、3カ月後の秋の9月限り(仮に9月の第2金曜日と仮定してもよい)米先物を10キロ売ったとしよう。
そして、は規制されているので、想像することが難しいことではあるが……。
いずれにせよ、わが「耕作さん」は、単に、秋の米の値段に保険をかけたにすぎない。
米の先物価格が変動するにつれて、特に米の先物価格が高騰すれば、追証が発生する可能性がある。
わが「耕作さん」は取引所に支払いを行なわなければならないことになる。
では、米価が満期まで大きく動き続ければどうなるのだろうか。
「耕作さん」は、米価が上昇を続けるたびに、取引所への支払いを続けなければならないのだろうか。
もちろん、先物の売りを買い戻すことで、満期までに損を確定することは常に可能だ。
だが、最終的には、わが「耕作さん」は、日ごろの努力の成果がみごとに実ることで、現物の米を秋に収穫できるのであれば、9月の満期時点にそれを時価(PTたとえば6,000円)で売れるので大丈夫だ。
満期時点における先物価格(FT)は現物価格(PT)に等しくなるというコンバージョンの性質があるからだ。
このコンバージョンの性質が意味するところは、6月から9月の先物契約期間中に、「耕作さん」の日々の追証額がいくらになるかはわからないものの、その累計額はFo-PT(たとえばマイナス1,000円)であり、それはちょうど先物契約の損益額に等しいのである
。
こうして、「耕作さん」は、自分が望むところの保障価格5,000円を結局獲得できたことになる。
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